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♢Fallen Angel♢

第3章 **

ベッドに戻ると、後ろから抱きしめられ腕の中で眠りに落ちた。

窓の外は群青の夜が明けていき、薄青に染まり、やがて日が登り始めるとカーテンの隙間から暖かな光が零れてくる。

眩しさにいつもより早く目を覚ますと駿の腕から離れてベッドから降りてニットを羽織ると、まだ寒いキッチンに立ち朝食を作り始めた。
「おはよ…」
寝室のドアが開くと駿があくびを漏らしながらソファーに体を沈め、その様子にカウンター越しから
「何か眠そうだね」
「ああ…電話で…」
何かを言いかけて口ごもる。
「何?そんなことより唯を起こしてきて」
温めた小さなピザと簡単なスープをテーブルに並べた。
渋々ソファーから起き上がり寝室に入り、ベッドで眠る唯を揺すり
「唯たん。起きて」
目が合うと寝返りをうち丸まる唯を抱き上げてパジャマ姿のままダイニングの椅子に座らせた。
テーブルを眺めたまま動こうとしない唯の手にピザを持たせると少しずつかじり始めた。
スープを残して食べ終えると椅子から降ろしソファーに用意していた服に着替えさせるとアラームが鳴り
「駿、送ってきて」
「ああ…うん。分かった」
小さなカバンを肩に掛けて動こうとしない唯を抱き上げて
「唯たん。ママに行ってきますしよ?」
唯は小さく頷いて蓮に手を振った。
リビングを出て行く姿を見送り、テーブルの上を片付けて猫足の椅子に膝を抱えて座り、タバコを咥えて火をつけた。
暫くすると戻ってきて
「ただいま。蓮、これ」
駿に手渡された紙には
〈お遊戯会のお知らせ〉
「それと『お遊戯会の練習でうさぎさん役をするので、ピンク色の上着を持たせて下さい』って言われたよ。連絡帳見てないの?」
「うん」
悪びれる様子もなく煙を吐き出した。
「上着は明日持たせたら問題ないんでしょ?」
「だと思うけど…」
タバコを灰皿に押し当てて火を消すと、寝室に入ってクローゼットを開けて小さな服を取り出して床に広げると淡いピンクの薄手のカットソーが並ぶ。
「駿?後で買い物に付き合って」
寝室に入ってくると広げている服を見て
「いいけど…唯たんの買い物?」
「そう」
面倒臭そうに小さな服をクローゼットにしまってベッドに潜ると
「少し寝るから適当な時間に起こして」
蓮の体に跨がるように重なり
「昨日の続きは?」
鬱陶しそうに駿の肩を押して隣に倒すと、背中を向けて丸まった。

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