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♢Fallen Angel♢

第3章 **

タクシーを捕まえると大型スーパーまで走らせて、入り口近くに停めてその場に待たせた。
他には目もくれず、子供服売り場に行くと目に付いたりんごのプリントの入ったピンク色のパーカーを選んで会計を済ませると、待たせていたタクシーに乗り込んだ。
陽が傾き、影が長く伸びる。
夕暮れを前に急ぐように車が走り出す。
マンション前で降りると疲労と荷物を抱えて部屋に戻った。
リビングのソファーに買い物袋を投げるように置くと駿が心配そうな顔で
「早かったね。何かあった?」
「シャワー浴びてくる」
「蓮?」
駿の言葉を無視して鏡台にバッグを置き、中からピルを取り出して口に含むとバスルームに入り、熱いシャワーと一緒に飲み込んだ。
体の痛みと鈍く残る余韻。
指先を中に入れて白濁したものを掻き出した。
いつもより長いシャワーを終えてバスローブを羽織り、髪をタオルで拭いながらリビングに戻ると、買ったばかりの紙袋を開けている唯と駿の姿があった。
「りんごー」
「唯たん、可愛いね」
「うんっ」
満面の笑みを浮かべる唯に
「だめじゃない。明日持って行くんだから」
強い口調に唯の顔が歪む。
「そんな頭ごなしに言わなくても…」
目線を唯に合わせて
「唯たん、お片づけしようね」
「…うん」
紙袋を抱えて手を繋ぐと二人して寝室に入って行った。
怒りの矛先を失った蓮は、猫足の椅子に座りタバコを咥えて火をつけた。
青白い煙が昇り、部屋を澱ませる。
タバコの三分の二ほど残して灰皿に押し付けていると戻ってきた駿が
「また勿体ない吸い方してる」
呆れ顔でソファーに体を沈めた。
後に続いて唯も駿の隣に小さく座る。
「いいじゃない別に…」
猫足の椅子から降りて寝室のドアを開けると
「少し寝てくる。適当な時間に起こして」
駿の返事も待たずにドアを閉めようとすると
「ゆいもー」
蓮とドアの隙間を潜り、寝室に入りベッドによじ登る唯を横目に面倒くさそうにベッドに横になると背中を向けて転がった。
背中に触れる唯の温もりが眠りへ誘う。

甘い眠りを邪魔するように体が揺すられ
「蓮、起きて」
煩わしく思い寝返りを打つ。
「蓮」
何度も呼ぶ声に
「もう何?」
「早くしないと遅刻しちゃうよ」
目を覚ましてサイドテーブルを見ると赤いLEDが出勤時間を迎えようとしていた。
面倒くさそうに起き上がるとバスローブを脱ぎ捨て、鏡台の椅子に座った。

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