
♢Fallen Angel♢
第3章 **
髪を乾かしてメイクを簡単に終わらせると、仕事用の丈の短いワンピースに着替えた。
バッグを掴み財布から現金を適当に抜くと無言で駿に渡して見送りを待たずに家を出た。
タクシーを捕まえて乗り込むと、膝の上でポーチを広げ、訝しがる運転手を無視してメイクを仕上げた。
タクシーから降りると歓楽街を力なく歩き、バッグを引きずるように店のドアを開け、賑わう店内を横目にロッカーに入った。
身支度を整えてロッカーから出ると直ぐにボーイに呼ばれてテーブルについた。
客を前に事務的にグラスに水割りを作り、投げかけられた言葉にも愛想笑いで応えるだけでいつもの覇気はどこにもない。
テーブルの移動も気怠さを隠せない。
馴染み客のテーブルにつき水割りを作っているとグラスが手から滑り落ち、床のタイルに破片が散る。
我に返り
「ごめんなさい。怪我してない?」
心配そうに客の顔を覗く。
「大丈夫だよ」
破片を拾おうとすると、気づいたボーイが片付けに来た。
気づけば仕事に集中できないままラストソングが流れる時間になった。
客を見送り、帰り支度をしていると店長に呼ばれ
「蓮ちゃん、何があったのか分からないけど仕事に集中できてないんじゃない?」
「…そんなつもりは…ないんですけど」
俯いたままこたえると店長は蓮の肩を掴み
「悩みがあるなら聞くからいつでも連絡して」
「はい…ありがとうございます」
店長が体から離れると力なく扉を開けて外に出た。
冷たい風が頬を刺す。
暫く歩くと見覚えのある車から着崩したスーツ姿の男が降りてきて、肩で風切るように歩き近づいてきた。
男は客で常連になりつつあった。
そしてヤクザな仕事をしていて、できれば店以外で関わりたくない。
男はいきなり蓮の腕を掴んで
「前にも話したから分かってるだろ?いつになったら返事くれるんだ?」
真剣な顔に柔らかい笑顔を返し
「でもまだ出会ったばっかりで…」
「それは前にも聞いた。もういいだろ?いい加減、俺の女になれよ」
より強く腕を握る。
心拍数が上がり、背中に嫌な汗をかく。
言葉を選んで
「まだお店の女の子でいる間は無理なの。ごめんなさい…」
渋々男が腕を離すと走り出し、慌ててタクシーを捕まえた。
歓楽街から離れると逃げるように居ビルに入り、上がる息のままチャイムも鳴らさずにバーに入った。
グラスをクロスで拭って棚に片付けている悠人と目が合った。
バッグを掴み財布から現金を適当に抜くと無言で駿に渡して見送りを待たずに家を出た。
タクシーを捕まえて乗り込むと、膝の上でポーチを広げ、訝しがる運転手を無視してメイクを仕上げた。
タクシーから降りると歓楽街を力なく歩き、バッグを引きずるように店のドアを開け、賑わう店内を横目にロッカーに入った。
身支度を整えてロッカーから出ると直ぐにボーイに呼ばれてテーブルについた。
客を前に事務的にグラスに水割りを作り、投げかけられた言葉にも愛想笑いで応えるだけでいつもの覇気はどこにもない。
テーブルの移動も気怠さを隠せない。
馴染み客のテーブルにつき水割りを作っているとグラスが手から滑り落ち、床のタイルに破片が散る。
我に返り
「ごめんなさい。怪我してない?」
心配そうに客の顔を覗く。
「大丈夫だよ」
破片を拾おうとすると、気づいたボーイが片付けに来た。
気づけば仕事に集中できないままラストソングが流れる時間になった。
客を見送り、帰り支度をしていると店長に呼ばれ
「蓮ちゃん、何があったのか分からないけど仕事に集中できてないんじゃない?」
「…そんなつもりは…ないんですけど」
俯いたままこたえると店長は蓮の肩を掴み
「悩みがあるなら聞くからいつでも連絡して」
「はい…ありがとうございます」
店長が体から離れると力なく扉を開けて外に出た。
冷たい風が頬を刺す。
暫く歩くと見覚えのある車から着崩したスーツ姿の男が降りてきて、肩で風切るように歩き近づいてきた。
男は客で常連になりつつあった。
そしてヤクザな仕事をしていて、できれば店以外で関わりたくない。
男はいきなり蓮の腕を掴んで
「前にも話したから分かってるだろ?いつになったら返事くれるんだ?」
真剣な顔に柔らかい笑顔を返し
「でもまだ出会ったばっかりで…」
「それは前にも聞いた。もういいだろ?いい加減、俺の女になれよ」
より強く腕を握る。
心拍数が上がり、背中に嫌な汗をかく。
言葉を選んで
「まだお店の女の子でいる間は無理なの。ごめんなさい…」
渋々男が腕を離すと走り出し、慌ててタクシーを捕まえた。
歓楽街から離れると逃げるように居ビルに入り、上がる息のままチャイムも鳴らさずにバーに入った。
グラスをクロスで拭って棚に片付けている悠人と目が合った。
