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♢Fallen Angel♢

第1章 APPETIZER

「…ごめんね。蓮が行きたいって誘ったのに」
男を上目遣いで見つめると
「いいよ気にしなくて。行こうか?」
「うん」
指先を絡ませ手を繋ぐと歓楽街を歩き出した。
昼間のように明るいネオンや看板の明かり。
雑踏を潜り店の前に着くと繋いでいた手を離し、ドアを開けて男を先に入るように促した。
「いらっしゃいませ」
ボーイが笑顔で出迎える。
「先に待ってて。すぐに行くから」
笑顔を送り奥のロッカーに入ると、ワンピースからドレスに着替えて時計を外した。

時計を付け外しするのは都合よく客をコントロールするため。

フロアーに出ると
「蓮さん。ご指名です」
クラッチバッグを抱えてドレスの裾を揺らし、ボーイの後に続いてテーブルについた。
「お待たせ」
膝が付くくらい近くに座ると、ブランデーボトルを指差して
「蓮も貰ってもいい?」
「いいよ」
「ジンジャーエールとレモンもいい?」
「水割り苦手なんだっけ?お子さまだな…」
髪を撫でる。
「そんな事ないもん」
手を伸ばしてボーイを呼び持ってくるよう頼む。
「貸し切り状態だね」
男の言葉に周りを見渡して
「まだ早い時間だからかな?」
手招きに耳を傾けると
「蓮を独り占めできるから、俺は嬉しいけど」
「蓮もだよ」
目が合うと小さく笑いあう。
ボーイの持ってきたスライスレモンを沈め手早くブランデーをジンジャーエールで割り即席のHORSE′S NECKを作ると
「いただきます」
グラスを合わせて一口。
指先が頬を擽り
「弱いんだから飲み過ぎるなよ?」
「分かってる」
胸に凭れ髪を撫でられていると
「蓮さん」
ボーイに呼ばれ
「ごめんね。ちょっと行ってくる」
名残惜しそうに目線を送った。
ボーイの後を続いてテーブルにつくとスーツ姿に一瞬迷い
「失礼します…お疲れさま」
笑顔を向け、小さく手を振った。
「久しぶりだね。会えて嬉しい。でもスーツ姿初めてじゃない?」
隣に座り空きかけたグラスに手際よく水割りを作ると
「そうだっけ?」
「そうだよ。蓮も貰ってもいい?」
「どうぞ」
同じように水割りを作りグラスを合わせて
「いただきます」
バーボンを渋くなる顔を堪えて飲み込む。

サイドを甘えられない客…

「連絡できなかったから寂しかったよ」
「仕事が忙しかったからね。時間が空いたから来れたんだよ」
ドレスのスリットから膝に指を滑らせて撫でられる。

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