
♢Fallen Angel♢
第1章 APPETIZER
ロッカーで挨拶を交わし、着替えると裏に待たせてあったタクシーに乗り込んだ。
ミーティングは客から逃げるための口実。
歓楽街から離れ雑居ビルの前でタクシーから降り、会員制のバーのチャイムを鳴らし
「蓮だけど」
インターフォン越しに
『開いてるぞ』
中に入りカウンターの隅に座った。
「ビールもらうぞ」
「うん」
タバコを咥えるとデュポンの弾く高い音がし、手を添えて火をつけて貰い、何度も煙を肺に満たす。
「いつものでいいのか?」
「うん」
シェーカーの小気味よい音が響く。
カウンターにうなだれていると目の前のカクテルグラスが淡いピンクに染まるFLMINGO LADY。
「これ飲んだら帰れよ」
「分かってるって。悠くん」
起き上がり小さな瓶ビールを指差して悠人(ゆうと)から受けとると、華奢なグラスに注ぎ
「おつかれ」
グラスを合わせて一口。
「客がいないんだからその呼び方やめろよ。気色悪い」
「だって癖になってるんだもん。昔みたいに呼べないよ…」
俯くと腕を引き寄せられ、小さく唇が重なる。
「…もう、酔ってるの?」
大きな背中を向け、素知らぬ顔でグラスを拭っている。
隣の椅子に置いたバッグの中の携帯の点滅に気付き、メール画面を見ると
《どこにいるの?》
〈悠くんの店で飲んでるよ〉
返信すると直ぐに
《下にいるから降りてきて》
カクテルを飲み干して
「帰るね」
「もういいのか?」
「飲んだらすぐ帰れみたいに言ってた癖に…」
「外まで送るよ」
悠人がカウンターから出ようとするとチャイムが鳴り
「ここでいいよ。またね」
手を振ると、すり抜けるように客と挨拶を交わしすれ違う。
外に出ると黒塗りの高級車が既に停まっていて、助手席に体を沈めると
「お疲れさ…ま」
腕を掴まれると引き寄せられると熱く唇が重なり、吸い付くように舌を絡め、零れる音に体の奥が痺れ溺れそうになる。
胸を押し
「…ここじゃダメ」
指先が髪に触れ頬をくすぐる。
「どこならいいの?蓮はどうして欲しい?」
「源(みなもと)さんの意地悪…」
車はエンジン音を響かせて歓楽街を離れていく。
街灯が減り窓は暗闇を映し出す。
開けた窓から潮の香りがし、風に靡く長い髪。
初めてのデートを思い出す。
ミラー越しに目が合うたび高鳴った胸。
抱き寄せられた暖かい腕。
波打ち際で迎えた朝焼け。
頬に触れた柔らかな唇。
でも今は…
ミーティングは客から逃げるための口実。
歓楽街から離れ雑居ビルの前でタクシーから降り、会員制のバーのチャイムを鳴らし
「蓮だけど」
インターフォン越しに
『開いてるぞ』
中に入りカウンターの隅に座った。
「ビールもらうぞ」
「うん」
タバコを咥えるとデュポンの弾く高い音がし、手を添えて火をつけて貰い、何度も煙を肺に満たす。
「いつものでいいのか?」
「うん」
シェーカーの小気味よい音が響く。
カウンターにうなだれていると目の前のカクテルグラスが淡いピンクに染まるFLMINGO LADY。
「これ飲んだら帰れよ」
「分かってるって。悠くん」
起き上がり小さな瓶ビールを指差して悠人(ゆうと)から受けとると、華奢なグラスに注ぎ
「おつかれ」
グラスを合わせて一口。
「客がいないんだからその呼び方やめろよ。気色悪い」
「だって癖になってるんだもん。昔みたいに呼べないよ…」
俯くと腕を引き寄せられ、小さく唇が重なる。
「…もう、酔ってるの?」
大きな背中を向け、素知らぬ顔でグラスを拭っている。
隣の椅子に置いたバッグの中の携帯の点滅に気付き、メール画面を見ると
《どこにいるの?》
〈悠くんの店で飲んでるよ〉
返信すると直ぐに
《下にいるから降りてきて》
カクテルを飲み干して
「帰るね」
「もういいのか?」
「飲んだらすぐ帰れみたいに言ってた癖に…」
「外まで送るよ」
悠人がカウンターから出ようとするとチャイムが鳴り
「ここでいいよ。またね」
手を振ると、すり抜けるように客と挨拶を交わしすれ違う。
外に出ると黒塗りの高級車が既に停まっていて、助手席に体を沈めると
「お疲れさ…ま」
腕を掴まれると引き寄せられると熱く唇が重なり、吸い付くように舌を絡め、零れる音に体の奥が痺れ溺れそうになる。
胸を押し
「…ここじゃダメ」
指先が髪に触れ頬をくすぐる。
「どこならいいの?蓮はどうして欲しい?」
「源(みなもと)さんの意地悪…」
車はエンジン音を響かせて歓楽街を離れていく。
街灯が減り窓は暗闇を映し出す。
開けた窓から潮の香りがし、風に靡く長い髪。
初めてのデートを思い出す。
ミラー越しに目が合うたび高鳴った胸。
抱き寄せられた暖かい腕。
波打ち際で迎えた朝焼け。
頬に触れた柔らかな唇。
でも今は…
