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夏のシュークリーム

第3章 賭けには勝てたから

両腕でふわりと包むように、咲を抱く。

「俺も本当は凄く会いたかった。だから来てくれて嬉しいよ」
「あのっ、具合は大丈夫ですか?倒れたってメールを貰って、びっくりして来たんですけど…あの、お医者さんに行った方が良くないですか?」
「大丈夫だよ。俺、すっごいアルコールに弱くてさ。二人が持って来てくれたシュークリームに、ブランデーが入ってたみたいで。それにやられたらしい。」
「気持ち悪くはないんですか?頭が痛いとか。」

咲は本気で心配してくれているようだ。
「今は平気。多分君が来てくれたからかな…園田さん」

抱きしめていた腕を緩めて、咲の顔を見ると、潤んだ瞳が心配そうにこちらを見つめ返す。

そっと唇を合わせる。咲の唇は緊張しているのか、堅い。

けど、そんな慣れない、初々しいところがまた可愛いと、松井は思わず微笑んだ。

「ごめんね。疲れてるよね」
「私は全然大丈夫ですよ。」

咲はにっこりと答えた。
この笑顔、すごく癒やされる…松井の中で咲を愛しいと思う気持ちが益々膨らんでくる。

「松井さんのお部屋、やっぱり本が沢山ありますね。小さな図書館みたい」
「気になったのがあれば、持ってっていいよ。」

読書という共通の趣味が、二人の仲を発展させてくれた。

「今お借りしている分がありますから、それを読み終えたらお願いしますね」

口には出せないが
本を持っていくのではなく、寧ろ君自身がずっとここにいればいいのにと思ってしまう。

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