夏のシュークリーム
第1章 会えない日のお客様
「だから今は駄目だってばー!」
ミカは抜け出そうと、手足をジタバタさせるが、ガッチリと次郎に押さえ込まれる。
松井はあえてそれを見ないように視線を外し、シュークリームだけに意識を集中し、味わった。
表面かサクッサクのシュー生地に、甘酸っぱいイチゴクリームがたまらない。それに、なんとなく奥ゆかしい香りもして、思わず顔がほころぶ。
彼は幸せな気分になった。
そして…
松井はそのまま意識を失い、床に倒れ込んだ。
夢か現実か、定かでないが声を聞いた気がする。
「やっと効いたか…量少なめだったからなぁ」
「松井さん、なんか物凄い勢いで倒れたけど…」
「大丈夫だよ。悪いものじゃないから。どこもぶつけてないみたいだし。…さて、運ぶか」
バニラとは別の、奥ゆかしい、甘い香り。
確かこれは…ブランデー。
松井はアルコールにめっぽう弱かった。
ビールを一口飲んだだけで、立ち上がれなくなるほどに…。
「うまくいくかな…」
ミカが心配そうに次郎に尋ねる。
「うまくいって貰わなきゃ」
次郎が、松井をお姫様抱っこして階段を上がる。
次郎は細身の割にやたら力がある。
「よっと」
二階に上がると、松井を彼の部屋のベッドに転がすように置いた。
乱暴な扱いにも関わらず、目覚める気配はない。
「寝顔が可愛いのは昔から変わんないね」
眼鏡を外してやり、やたらと長い前髪をかきあげる。
「ゆっくり眠るんだよ、今お姫様を呼んできてあげるから」
と耳元でささやく。
ミカは二人の、その妖しげで異様な雰囲気に自らの心拍が上がるのを感じた。
うーわぁ、なんだかこのままヤらしい展開になりそう。そうなるのはちょっと嫌、…だけど見たいような、見たくないような…。
いつの間にか、次郎はこちらを楽しそうに見つめている。
「何か想像しちゃった?」
「えっ!!…いやっべつにっ!!」
ミカは動揺した。
次郎はニヤニヤ笑いながらミカに近づくと、右手でソロリとミカの頬を撫でた。
心臓の動きがじっとしてても分かる。
「もうひと仕事終えたら、遊ぼうね」
何をして…とは聞かずもがな、大体検討はついてしまう。
ミカは恥ずかしくなり、顔を抑えたまま、無言で階段をおりた。
ミカは抜け出そうと、手足をジタバタさせるが、ガッチリと次郎に押さえ込まれる。
松井はあえてそれを見ないように視線を外し、シュークリームだけに意識を集中し、味わった。
表面かサクッサクのシュー生地に、甘酸っぱいイチゴクリームがたまらない。それに、なんとなく奥ゆかしい香りもして、思わず顔がほころぶ。
彼は幸せな気分になった。
そして…
松井はそのまま意識を失い、床に倒れ込んだ。
夢か現実か、定かでないが声を聞いた気がする。
「やっと効いたか…量少なめだったからなぁ」
「松井さん、なんか物凄い勢いで倒れたけど…」
「大丈夫だよ。悪いものじゃないから。どこもぶつけてないみたいだし。…さて、運ぶか」
バニラとは別の、奥ゆかしい、甘い香り。
確かこれは…ブランデー。
松井はアルコールにめっぽう弱かった。
ビールを一口飲んだだけで、立ち上がれなくなるほどに…。
「うまくいくかな…」
ミカが心配そうに次郎に尋ねる。
「うまくいって貰わなきゃ」
次郎が、松井をお姫様抱っこして階段を上がる。
次郎は細身の割にやたら力がある。
「よっと」
二階に上がると、松井を彼の部屋のベッドに転がすように置いた。
乱暴な扱いにも関わらず、目覚める気配はない。
「寝顔が可愛いのは昔から変わんないね」
眼鏡を外してやり、やたらと長い前髪をかきあげる。
「ゆっくり眠るんだよ、今お姫様を呼んできてあげるから」
と耳元でささやく。
ミカは二人の、その妖しげで異様な雰囲気に自らの心拍が上がるのを感じた。
うーわぁ、なんだかこのままヤらしい展開になりそう。そうなるのはちょっと嫌、…だけど見たいような、見たくないような…。
いつの間にか、次郎はこちらを楽しそうに見つめている。
「何か想像しちゃった?」
「えっ!!…いやっべつにっ!!」
ミカは動揺した。
次郎はニヤニヤ笑いながらミカに近づくと、右手でソロリとミカの頬を撫でた。
心臓の動きがじっとしてても分かる。
「もうひと仕事終えたら、遊ぼうね」
何をして…とは聞かずもがな、大体検討はついてしまう。
ミカは恥ずかしくなり、顔を抑えたまま、無言で階段をおりた。