テキストサイズ

夏のシュークリーム

第2章 ヨソサマのお宅で

そうでないとしても咲の方が、厳しい父親に夕方以降、一人で家から出掛けることを禁止されている。

箱入り娘。

自分が父親でもそうする、と松井は園田父の気持ちを理解した。

そんなこんなで、あの花火大会で会って以来、松井と咲はずっと会えずにいた。

やっと日曜日、今日こそは!!と松井が朝、咲に電話すると

「すみません。今日は市民茶会でお茶を振る舞う事になってて…」

父親の実家が呉服屋を営むという理由もあり、咲は幼い頃から茶道を習っていた。
今ではなかなかの腕前である。

「へーっ、そうなんだ…そっか。じゃあ仕方ないね。…頑張って!」
「はい、…あの、すみません…」

大勢の前でお茶を煎てるんだって。
それじゃ、終わった後は気疲れや疲労で自分に会う余裕なんてないだろうな…。
ここでガッツくのは大人げないし…
来週なら、会えるかもしれないし。

松井はそんな風に、諦めてしまったのだった。

しかし、紆余曲折の末、折角復縁出来たって言うのに…という気持ちがどこかに有り、悶々としていると

「やぁ!ミカがね、イワシに会いたいって言うから、明日行ってもいい?勿論短時間でいいし、咲ちゃん来てたら邪魔しないようにするし」

と次郎から電話が入った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ