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好きで、好きで、好きで。

第3章 さざ波

「…」

鞄を拾い、中から携帯を取り出し一息つく。
そして意を決したように押しなれた電話番号にかけた。

ープルルッ…プルルッ…

3コールしてすぐに聞きなれた声が聞こえてきた。

『かかってくると思ってた。』

「…私はもう好きじゃないよ。私には、好きな人が、いるの。」

『知ってる。でも僕はまだ好きだよ。紗理奈。』

「二宮が私を裏切ったんだよ。」

静かな声、紗理奈が愛した声が一瞬止んで、相手の息遣いだけが耳に響く。

『…悪かったって思ってる。けど僕はどうしようもなく紗理奈が一番好き。』

「…」

二宮はいつも紗理奈をこうやって離れられなくしていく。
言葉で、身体で、心で、紗理奈を逃がさない。

「前に二番目で良いっていったよね。」

『うん。紗理奈の心は僕が一番じゃなくても、今のその相手が一番でも、僕はかまわない。』

「…」

『ねえ紗理奈。』

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