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BL~中編・長編集2~

第4章 ~Ricordo~

「そうなんですか。 いいですね、ご自分の家庭があるというのは。」

過去形で言ったことに、健一は気が付かなかったようだ。

にっこり笑うと、彼女が・・・・実咲さんが剥いたリンゴを食べ始めた。

「お前、皮むきできるようになったんだな。」

「失礼ね。 あなたに料理下手って言われたから、必死に練習して、今では一通り作れるようになったのよ?」

目の前で、自分と同じ名前の女性と仲良さげに話す健一。

「っ・・・」

ヤバい・・・泣きそうだ。

「すみません。 今日は、この辺で失礼します。」

「あ、安藤さん!!」

「・・っ・・・?」

泣き出す前に部屋を出ようとしたら、健一に呼び止められた。

「よければ、明日も来ていただけますか? 入院生活というのは、どうも暇でして・・・話し相手になっていただきたいのですが。」

「え、っと・・・・じゃあ・・・また明日・・・」

部屋を出てから、健一の言葉に頷いてしまったことを後悔した。

健一から離れないといけないのに・・・どうして、頷いちゃったんだよっ・・・・

「・・・・マンション・・・出て行く準備しよ・・・・」

この指輪のことも・・・健一は忘れてしまったのか。

あんなこと聞かれて・・・・すごいショックだった。

「健一・・・」


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