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BL~中編・長編集2~

第13章 ~天然男子の純愛~

「よく…わかったね。 あの曲、ピアノ全然目立たないのに。」

「ん? あぁ…今ちょうど練習してたからな。」

そう言って、一颯君は、筒状にまるめてサックスに入れてあった楽譜を僕の前に差し出した。
楽譜には、『In The Mood』の文字。

ってことは…一颯君も、ジャズやってるの?

「練習って…今吹いてたってこと?」

「あぁ…隣の準備室で。 今日は部活ない日なのに、ピアノの音が聞こえると思って出てきたら、お前が弾いててびっくりした。」

ええ!? 全然気がつかなかった。
僕、そんなに耳悪かったかなぁ…?
でも、そんなことより…

「部…活…?」

この学校は、音楽系は吹奏楽部しかないんじゃないの?
今日、吹奏楽部は活動してたし…一颯君が言ってるのは、吹奏楽部のことじゃないよね?

「お前、ジャズ部知らないのか?」

「ジャズ部? ジャズ部があるの?」

知らなかった。
でも、部活案内のパンフレットに、そんな部活あるって書いてなかったような…

「あぁ…ま、ちょうどいいや。 ちょっと、練習付き合えよ。」

「えっ?」

そう言って、一颯君は僕を椅子に座らせ、楽譜の一部を示した。

「ここ。 ソロの掛け合いあるだろ? やることになったんだけど、どうも上手くできないから、ちょっと付き合ってくれよ。」

「う、うん。 いいけど…」

確かに、リズム帯がないと、練習しにくい…よね。

僕は一颯君に言われるまま、ソロが入りやすいように、少し前の部分から弾き始めた。

「うーん…やっぱ、いまいちなんだよな…」

「あ、あの…ここにあんまり音を入れないで…こっちに力入れてみて? 僕、ソロが入りやすいように、ここの部分強めに入れる…から…」

一颯君の楽譜を見ながらそう言い、何か言われる前に、先程と同じところから弾き出した。
急に僕が意見を出したことに驚いた様子を見せていた一颯君も、僕がピアノを弾き始めると、慌てて楽器を構え、僕が言った通りにソロを吹いた。

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