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BL~中編・長編集2~

第13章 ~天然男子の純愛~

「……どう…だった? 僕は、さっきよりもこっちの方がいいと思う…けど…」

「…………お前、すごいな。 初めて上手く吹けた。」

よかった。 納得のいく演奏ができたみたいで。
もう少し…一緒に練習したいな…

「なぁ…もう少し付き合ってくれないか?」

一颯君も同じこと思ってくれてたんだ。
なんか、すごい嬉しいな。

「うんっ!! いいよ!!」

その後は、時間も忘れて一颯君と練習した。
二人きりの音楽室に、互いが発する音だけが響く。
夕焼けに照らされた一颯君はとても綺麗で…ピアノを弾かず、ただ眺めていたいと思うほどに。
楽しそうに楽器を演奏する一颯君は、いつもとはまた違う笑顔を浮かべていて…
そんな彼を見て、僕はずっとドキドキしてた。
なんでドキドキしてるのかはわからなかった。
たぶん、初めて一颯君と向き合えた気がして、気分が高まってたのかな…?

それで、気がついたら、外は暗くなっていて…
時間を確認したら、六時半過ぎだった。
あれから二時間…本当に、時間を忘れて楽器を演奏してたみたい。

「もうこんな時間か。」

「そ、そろそろ帰った方がいいかも…ね。」

ふと耳を澄ましてみると、遠くの方から、部活を終えて帰る生徒達の話し声や笑い声が聞こえる。
たぶん、チャイムが鳴ったりしてたんだろうけど、全然気がつかなかった。

「じゃ、帰るか。」

「あ…う、うん!!」

楽器を片付け、一颯君の後について音楽室を出る。
楽器っていうコミュニケーション手段がなくなったから、僕は何を話していいかわからず、無言。
音楽室を出て最初に口を開いたのは、一颯君だった。

「詩音はさ…もう入る部活決めたのか?」

「へっ!?」

い、いいい今、僕のことなんて呼んだ!?
な、なま…名前っ…なんで知って…

「な、なん…なんで、名前知って…」

「隣の席だし。 一柳が呼んでるの何回も聞いてるし、当然だろ?」

な、なるほど…でも、名前で呼ばれるなんて思ってなかったから、すごいびっくりした…

「で…でも、なんで名前で…」

「詩音だって、俺のこと名前で呼んでるだろ。 お前だけ、なんかずるいじゃん。」

ひぃぃぃぃ…そ、そうでした。
僕、何も考えずに名前で呼んじゃってたよぉ…


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