BL~中編・長編集2~
第13章 ~天然男子の純愛~
「お待たせ。」
「あ、もう大丈夫?」
「あぁ。」
準備室から出てきた一颯君に、お父さんからもらったアドバイスを書き込んだ譜面を渡した。
「これは?」
「あ、あのね…昨夜、お父さんに練習付き合ってもらって…その…僕のお父さん、一応プロのジャズサックス奏者だから、一颯君が上手く吹けないって言ってたところのアドバイス…もらってきたんだ。」
お父さんからのアドバイスが細かく書かれている譜面を見て、目を丸くした一颯君。
あ、初めてこんな表情見たな…
じゃなくて!!
「け、結構細かく書いてあるけど…あくまでも、その…アドバイスってだけだから、さ、参考程度になればいいな…と思って…」
「………」
何も答えない一颯君。
不安になって、僕はうつむいてしまった。
やっぱり、余計なことだったかな…?
「ありがとう。」
「え?」
顔を上げると、一颯君は嬉しそうに微笑んでいて…
昨日のように、僕の頭をポンポンと、軽く撫でてくれた。
「ッ…」
また速くなる鼓動。
僕、どうしちゃったんだろう?
「はぁ…はぁっ…」
あ、危なかった…
「今日も欠席はなし。と…」
先生が来るのとほぼ同時に教室に入った僕ら。
「ははっ。」
「はぁっ………へへ。」
息を切らせながら、お互いを見て笑った。
あの後…お父さんからもらったアドバイスを参考にしながら、練習したんだけど…
さすがプロのジャズサックス奏者。
お父さんのアドバイスはどれも的確で、一颯君はすごい上手くなった。
そしたら、もっとこうしたいとか、あーでもないこーでもないってやってたら…
気づけば、SHRが始まる五分前。
もっっっのすごい焦って、超特急で楽器を片付け、教室までダッシュ。
間に合ったことにほっとし、一颯君と笑い合っていたら、先生が…
「まだクラス委員決まってないのか。 明日の放課後、クラス委員の会議があるから、今日中に決めておけよ。」
そう言って、先生が教室を出て行くと、昨日の女子が…高羽さんがやって来た。
「お、沖田君…おはよ。」
「おはよう。」
彼女の隣には、昨日とは違う女子。
まだ委員についてない子。
高羽さん、すごいなぁ…僕なんて、やっと一颯君と少し仲良くなれたくらいなのに、もう何人も友達できたんだ。
なんて、呑気にそんなことを考える僕。