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BL~中編・長編集2~

第14章 ~番外編③~

「…………寒いからさ、ベッド行こう。 な?」

「………」

風邪引いたら大変だし。 そう思って提案すると、幸は俺の腕の中で黙って頷いた。

幸をベッドに座らせて後ろから布団をかけてやり、電気ストーブを点けて部屋を暖める。 その布団の上から抱きしめてやると、幸は……

くるっと振り返って、俺に強く抱きついてきたんだ。

「………斗真…」

幸……俺、こんなに頼りないのに…お前に何があったのか…お前が抱えてるものが怖くて聞けないくらい情けない男なのに、お前はそんな俺を頼ってくれるんだな…

「……幸…」

俺…決めたよ。 もう、お前から逃げない。 俺なんかに何をしてやれるのかわからないけど、俺の出来る限り…精一杯、お前のこと受け止めるよ。

「どうしたんだ?」

「……ッ…」

なかなか口を開かない幸。 俺は、あの日のように…幸がいなくなったあの日のように、ゆっくり話を聞くことにした。
それ以上何も言わず…幸から話を切り出すのを辛抱強く待つ。

「…こ、怖い…夢…見た…」

「………どんな夢?」

幸は……体を震わせながら、今にも消えそうなくらい小さな声で、夢の話をしてくれた。
少しでも恐怖を消せるように…より強く抱きしめ、頭を優しく撫でてやる。

「お、父さんと…お母さんが……道路の上に、血塗れで倒れてて…ッ…お、お兄ちゃんが、僕のこと一生懸命育ててくれたのにっ……おに…ッ…お兄ちゃんが…」

そこまで話すと、幸の体の震えがひどくなった。
抱きしめているから見えないけど、顔を見なくてもわかる。 幸は泣いてるんだって。

少しでも幸に安心してほしくて…幸の中から少しでも不安が消えればいいなと思いながら、幸を抱きしめる力を強くする。

「『お前は何もしてないんだから。 役に立たないんだから、これくらいいいだろ。』って…ふ、く…脱ぎながら…近づいてきてッ…」

「幸…」

それ以上は聞きたくなかった。 聞かなくてもわかった。 幸が、兄に何をされたのか。

「もういい……もう言わなくていい。」

「ッ……っ…」

幸は体を震わせながら……ぴったりと隙間なく、俺に強く抱きついてきた。

「………幸…もう一つ聞きたいことがあるんだ。 あの時、何があったんだ? 俺と少し離れてた間に、何が…」

「…い…いた…かも…」

いたかもって……まさか、そのお兄さんが?

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