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BL~中編・長編集2~

第15章 ~ほんとに好きなのは…?~


「……いくぞ?」

「ワン‼」

そう佐助に声をかけて、思いっきりボールを投げた生徒会長。

「おおー。」

俺なんかよりも運動神経がいいから、俺が投げた時よりボールは遠くへ飛んでいく。 そして、それを全力で追いかける佐助。

「すごいですね‼ 俺が全力で投げても、あんなに遠くまで飛んでいかないのに。」

「…まあな。」

そんな会話をしている間に、佐助がボールを咥えて戻ってきた。  ちゃんとボールを投げた生徒会長のところに戻ってボールを差し出す佐助。

「よしよし。 いい子だな。」

「ワン‼ ワン‼」

おお…佐助が生徒会長に尻尾を振ってる……ボールで遊ぶだけで、こんなに懐くものなのか…

先ほどまで生徒会長に向かって唸っていたとは思えないほどの喜び様。 無邪気で純粋で、ちょっと抜けてるところも可愛い佐助。
そして、そんな佐助に対して、いつもの無表情な顔ではなく笑顔を向けている生徒会長。

この人…こんなに楽しそうな顔もするんだ…

「……犬が好きなんですね。」

「…あぁ。 動物の中では一番好きだな。」

またボールを投げて、佐助が戻ってくるまでの間にそう尋ねると、生徒会長は少し笑顔を浮かべながらそう答えてくれた。

「そうなんですか。 俺も、犬が大好きなんですよ。」

「…………」

そう生徒会長に向かって言うと、生徒会長は黙り込んでしまった。

えっ? え?
な、なんで急に黙り込むんだ? 俺、もしかしてまたなんかやらかしたのか!?

「ワン‼」

戻ってきた佐助を少し撫でると、またボールを投げた生徒会長。
佐助がボールを追いかけて行くのを確認して、生徒会長は口を開いた。

「………どうして、俺にそんな笑顔を向けられるんだ? 俺は……お前に、あんなに酷いことをしたのに。」

「ぇ…」

そうだ。 俺は、この人にリンチにされたんだった。
忘れていたわけではないし、今でもこの人が怖い。 だけど…

「た、確かに、まだ生徒会長のこと怖いです…で、でもっ…犬が好きなら、悪い人じゃないのかなって……それに…」

動物が好きで優しくできる人に、悪い人はいない。 少なくとも、俺はそう思ってる。
佐助に向ける笑顔を見て、この人は本当は優しい人なんじゃないかって思ったんだ。

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