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BL~中編・長編集2~

第16章 ~大切なのは…~

「俺、遊ぶ約束なんてしてないけど? お前、昨日あいつに今日映画観に行こうって誘われなかったか?」

「何の話だよ。 そんな話一切されてねぇよ。」

どういうことだ。 柏木からは上手くいったって連絡があったのに。

「それに、今日は由佳の誕生日をみんなで祝うって前々から決まってたんだよ。」

「………」

そういうことか。 今やっと理解した。
きっと、柏木は俺に心配をかけたくなかったから、嘘の連絡を入れてきたんだ。
俺が、今日発売のゲームをどれだけ楽しみにしていたか柏木は知っているから。 気を遣わせないようにと思って、あんな連絡を…

「なあ、お前さ…今日が何の日か覚えてるか?」

「あ? んなことわかってるよ。 だけど、あいつもこいつらと遊びに行くの了承してくれたぜ?」

当たり前だ。 柏木が了承しないはずがない。
柏木は優しいから。 自分のわがままよりも、相手を優先してしまうんだ。
優しい柏木が言えるはずがない。
「部活仲間との約束よりも、俺との記念日を優先してほしい。」だなんて…

「俺、お前のこと全然わかってなかったわ。 お前はもっと、あいつのこと理解してるんだと思ってた。」

この一年、一番柏木の近くにいたのはこいつだから。 柏木が相手を気遣ってわがまま言えないことも、こいつはちゃんと理解してるんだと思ってた。

「は? 意味わかんねぇし。 いいから、さっさと手ぇ放せよ。」

「手、放してやるからさ。 今から俺が聞くことに正直に答えろよ。」

俺の要求に、心底面倒くさそうな表情を浮かべるあいつ。

「ちょ、ちょっと‼ あなたなんなんですか? いきなりわけのわからないことばっかり言って、せっかくみんなで楽しく…」

「あんたには悪いけど、俺もこればっかりは譲れないんだよ。」

口を挟んできた後輩マネージャーの言葉を遮り、そちらを見ることもなく、きっぱりとそう断言した。
変わらずあいつを睨みつけたまま、答えなければ絶対に手を放してやらないぞって意味を込めて掴む力を強くすると、何を言っても放してくれないと悟ったのか、あいつは大きなため息をつきながら頷いた。

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