BL~中編・長編集2~
第16章 ~大切なのは…~
「…木…」
ん……何……? なんか、呼ばれてるような…
「…わ木……ろ…」
頼むから、そっとしといてくれよ。 まだ寝ていたいんだから。
「柏木……きろ!!」
柏木……?
当然ながら、家族は俺のことをそんな風に呼ばない。
じゃあ、今俺を起こそうと体を揺すってきてるのは…?
「柏木、起きろ!!」
「⁉︎」
はっきりと言葉が聞こえた瞬間、意識が覚醒した。
だって、俺を呼ぶこの声は…この声の主は…
がばっと勢いよく起き上がると、俺の目の前にはここにいるはずのない人物が。
「黒川…どうし…⁉︎」
起き上がった俺を、今にも泣きそうな表情を浮かべながら抱きしめてきたあいつ。
抱きしめられている俺は、この状況に頭がついていけない。
なんで…黒川が…マネージャー…誕生日って…
「ごめん。」
「ぇ…」
俺の思考は、あいつの謝罪の言葉で完全に停止した。
「ごめんな。 俺、お前の気持ち全然わかってなかった。」
「……黒…川…?」
今だに何が起きているのか理解できない俺は、抱きしめられたままあいつの言葉を待つことしかできない。
「さっき、山本に会った。」
「ぇ……ど…こで……」
山本に会ったことを聞いた瞬間、全身から血の気が引いていくのがわかった。
だって、今日は山本と遊ぶことになってるって、黒川には嘘をついた。
そして、山本には黒川と映画に行くって嘘をついたから。
その二人が会ってしまったということは……俺の嘘が、二人にバレてしまったということ。