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BL~中編・長編集2~

第16章 ~大切なのは…~

「まー照れちゃってー。 かーわーいーいー。」

「ッ…うるせぇ‼」

からかってくる山本はムカつくけど、正直それどころではない。

な、なっ……あいつ、なんてことを…ッ…それも、あんな大勢の前でなんて……

例え相手が俺だと知られていないとしても、恥ずかしいにもほどがある。

「お前にそんなこと言わせる相手って、誰なんだよ‼‼」

「誰なのか教えて‼」

「だから、誰だっていいだろ。 っていうか、どけよ。 俺、柏木に用があって来たんだから。」

そう言っているのが聞こえて顔を上げると、あいつがこっちに向かってきているのが見えた。
あいつの恋人が誰なのかわからないクラスの連中は、あいつの後ろでぶーぶー文句を言っている。

「おーい。 柏木……って、お前…どうしたんだ? 顔真っ赤だぞ? 熱でもあんのか?」

こいつ……わかってるくせに…わざとらしすぎるだろ…

全部知っている山本は、この状況に必死に笑いをこらえている。

「念のため保健室行こうぜ。 ほら。」

「ちょっ…」

「おー。 行ってこい行ってこい。 熱があって、風邪移されても嫌だし~。」

俺の腕を掴んで立ち上がらせようとするあいつを見て、面白そうに笑いながら調子を合わせてくる山本。

ほんと、こいつの空気を読む能力は時々恨めしい…

「いいから。 さっさと行くぞ。」

「ちょっと待っ…」

あいつは、俺の言葉なんて聞く気がないようで。 俺を無視してずんずん進んでいく。
後ろを振り返れば、山本が「行ってらっしゃい。」とでも言うようにひらひら手を振っていた。

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