BL~中編・長編集2~
第17章 ~一番好きな人~
『遥先輩!!』
『………朝陽…?』
一年後……僕は、先輩と同じ大学に進学した。 どうしても、先輩に会いたくなっちゃったんだ。
『お前…どうして…』
『先輩と同じとこ受験しました!! これからもよろしくお願いしま…』
『遥くーーん!!』
僕の言葉を遮って、先輩の名前を呼ぶ声。 声の主は、後ろから先輩の腕に親しげに抱きついて、僕の目の前で先輩に甘えだした。
僕は……そんな光景が信じられなかった。 高校の頃は、彼女さん一筋で…絶対に他の女子に親しげに体を触らせることなんてなかったのに…どうして…?
『せ…んぱい…?』
『悪いな、朝陽。 今日はこいつとデートの約束してるから。 またな。』
僕に向けてくれる笑顔が、どこか寂しそうで……
先輩…会っていない間に、何があったんですか?
その後……将仁と知り合って、先輩に何があったのか知ったんだ。
先輩は大学に入ってすぐに、彼女さんに振られてしまったらしい。 振られた理由まではわからなかったけど…とにかく、信じていた彼女さんに振られてしまったことで、先輩の中で何かが変わってしまったんだ。 それまで、彼女さん以外の女子には見向きもしなかったのに……来る者拒まず、去る者追わず…まさに、そんな状態になっちゃったんだ。
告白されても断らないから、彼女さんもどんどん増えていって…僕が入学した時には、彼女さんの人数は十人を超えていた。
僕は、あの先輩がそんな風に変わってしまったことが信じられなくて……でも、その現場を目の前で見てしまったから、それが現実なんだと思い知らされて…どうすれば元の先輩に戻ってくれるのか、僕に何ができるのか、そんなことばかり考えていたある日……先輩から声を掛けられた。
『飯食いに行かないか?』
先輩の誘いを断るわけがなくて、もしかしたら、何があったのか先輩の口から直接聞けるんじゃないかなって思って、先輩について行った。
移動している時も、ご飯を食べている間も、先輩は昔と変わらなくて…この間見たことは夢だったんじゃないか。って錯覚しそうになった。