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BL~中編・長編集2~

第17章 ~一番好きな人~

『………』

『……先輩?』

だけど、楽しそうに話していた先輩が、急に黙り込んでしまったんだ。

『……何も聞かないのか?』

先輩が何のことを言っているのか、わからないわけがなかった。 でも…僕なんかが、そんなこと聞いていいのかわからなくて…
僕が何も言わずにいると、先輩がぼそぼそと話し出したんだ。 まるで、独り言みたいに。

『信じてたんだ…俺らなら、離れても大丈夫だって。 だけどさ、そんなこと思ってたのは俺だけだったんだよな…『好きな人ができたから別れて。』って…大学に進学して一ヶ月もしないうちに、そう言って一方的に別れられてさ……』

そんな……彼女さんは、先輩のことを本当に好きなんだと思ってたのに…
たった一ヶ月離れただけで、他に好きな人ができたなんて…

『高校生の頃は…付き合ってた頃はさ、あいつのこと好きだって気持ちで一杯で、あいつも同じ気持ちでいてくれてるはずだって信じてたのに…離れた途端、あっさり振られてさ…『好き』なんて気持ちはずっと続くものでもないし、案外呆気なく消えるものなんだって思ったらさ、なんか、『彼女』とか『恋人』とかどうでもよくなっちゃってさ…』

そう言って、先輩は笑っていたけど…今にも泣きそうだった。 僕は、先輩がどれだけ彼女さんを大切にしていたか知っていたから、先輩の気持ちを考えると僕まで泣きそうになって…
それと同時に、まるで先輩に対する自分の気持ちを否定された気持ちになった。 だから、悲しくて…悔しくて…

『き、消えずに…ずっと続くものだってありますよ…ぼ、僕はっ…!!』

一生言うつもりなんてなかったのに…誰にも言うつもりなんてなかったのに……
僕はムキになってしまったんだ。

『ずっと…先輩が好きなんです…先輩に嫌われても、離れることになっても、僕は先輩のことが…』

『じゃあさ…』

僕の告白を聞いた先輩の顔から、今までのような親しみのある笑顔が消え、表面上だけの笑顔になった。
それは、先輩と出会ってから初めて向けられた笑顔で…

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