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BL~中編・長編集2~

第17章 ~一番好きな人~

「あ、あの……辻元先輩…?」

おそるおそる声を掛けてみても、先輩は僕を無視してずんずん歩いていく。

せ、先輩…なんか怒ってる? 背中にそう書いてあるんだけど……僕、なんかしたっけ?
っていうか、この状態を他の彼女さんに見られたら、怪しまれるんじゃ…

なんて僕がぐるぐる考えている間に、先輩は僕の腕を引いて喫茶店に入った。
この喫茶店、裏通りにあるせいか、いつも人がいないんだ。 でも、落ち着いた雰囲気でコーヒーも美味しいし、すごく気に入ってる。 たいていはこの店で先輩と会ってるんだ。 この店になら、僕らの知り合いも来ないだろうし、他の彼女さん達に見つかることもないだろうし。

「コーヒー二つ。」

僕の腕を引いたまま店の一番奥の席に腰を掛けた先輩は、いつものコーヒーを頼むと、特に何をしゃべるわけでもなく僕らの間には微妙な空気が流れた。

「…………」

先輩……怒ってる…よね…? でも、僕なんかしたかな…え……今日、先輩となんか約束してたっけ!?
で、でも、先輩との約束忘れるわけないし…だとしたら、先輩が怒ってる理由ってなんだろう…?

なんて、僕が一人で「うーん…」とうなっていると、ずっと黙っていた先輩が口を開いた。

「……あいつ…」

「え?」

あいつ……? あいつって、もしかして将仁のこと?

「仲……いいのか…?」

「将仁ですか? はい。 大学に入って一番最初にできた友達ですから。」

「………ふーん…」

僕の返事に納得したような…していないような様子の先輩。

「……友達…ねぇ…」

「??」

将仁のこと…気になるのかな…? でも、僕にとっては大事な友達だし…なにより、先輩とのことを知ってる、数少ない相談相手だから…

「…………」

先輩は、将仁と友達やめろなんて言わないと思うけど、もし言われたらどうしよう…
僕…将仁のこと好きなのに…あ、もちろん、友達としてね。

「……そういや…お前さ…」

「ぇッ!? あ、はい!!」

急に声をかけられて、驚いて声を上げる僕。

「今日も、あいつに声かけられてただろ?」

「へっ?」

あいつ…? あいつって誰だろう?

先輩が言う「あいつ」がわからず、首を傾げる僕。 そんな僕を見て、先輩は呆れたように誰のことなのか補足説明してくれた。

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