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BL~中編・長編集2~

第17章 ~一番好きな人~

「……そろそろ出るか。」

「あ、はい!!」

僕の話を聞き終えた先輩が、どんな風に思ったのかはわからなかった。
先輩の顔が見える前に、先輩は立ち上がって先にお店を出てしまったから。

「あのっ…先輩!!」

「……なに?」

駅に向かって先を歩く先輩の後を追いながら先輩のことを呼べば、先輩は立ち止まってくれた。
やっぱり、先輩が優しいのは変わらないなぁ…なんて思ったら、嬉しくて自然と笑顔になってしまう。

「コーヒーごちそうさまでした。 お金払ってもらって、すみません。」

「…いいよ、別に。 俺が無理に付き合わせたんだし。」

あ、そうだ……将仁に謝らなきゃ。
今日は将仁と遊びに行く約束してたのに……

「じゃ…俺、別の子と約束あるから。」

「ぁ……はい…」

先輩の言葉に、一気にどん底に突き落とされた感覚になった。
所詮、僕は……数多くの彼女さん達の一人に過ぎない。 いや……その位置にもいないと思う。

「はぁ……」

彼女さんとの待ち合わせに向かう先輩の背中を見ていたら、とても悲しくなった。










「あ‼ 朝陽ちゃん‼」

「‼」

先輩と喫茶店に行ってから一週間。
他の講義を受けている将仁を待っていると、名前を呼ばれた。
僕のことをちゃん付けで呼ぶ人なんて、一人しかいない。

「偶然だね~。 一人で何してるの?」

「先輩……えっと…」

いつも僕に声をかけてくるテニスサークルの部長さんだ。

ど、どうしよう……僕、この人苦手なんだよね…

「今…友達の授業終わるの待ってて…」

「そうなんだ。 ねぇ、授業終わるまでお茶でも行かない?」

いつものように、どこかに行こうと誘われてしまった。 でも…

『あいつの誘いには、絶対乗るなよ。』

先週、先輩にそう言われているし……僕も、なんかこの部長さん苦手だし…
断った方がいい…よね…?

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