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BL~中編・長編集2~

第17章 ~一番好きな人~

~遥SIDE~
「やっと二人になれたねっ‼」

「あぁ…そうだな。」

隣ではしゃいでいる彼女に目を向けることもなく、ぶっきらぼうにそう答える。

「遥、大学ではいつも他の彼女に囲まれてるんだもん。」

「…悪い。」

頬を膨らませて怒っている彼女を見ても、可愛いとも思わない。 むしろ、鬱陶しいとすら思ってしまう。
最近までは、こんなことなかったのに。

「今日は、私が遥のこと独占できるんだよね?」

「…あぁ。 もちろん。」

「うふふっ。 やった‼」

彼女の言葉に作り笑顔を浮かべて頷けば、はしゃいで腕を絡ませて胸を押し付けてきた。

あー……ヤバい。 俺、今日大丈夫なのか…?
こいつのこと抱ける気がしないんだけど…

隣で楽しそうにしゃべっている彼女の話も、頭の中に入ってこない。
なんか、心ここにあらずってこういうことを言うんだろうなって感じだ。

「でね、その時~…」

「へぇ~…すごいな。」

なんで目の前にいる彼女に集中できないのか。 なんで彼女のことをなんとも思わないのか。
なんで……

「あれ?」

朝陽のことが頭をちらつくんだ………?

「あ…」

「?」

足を止めた俺に、不思議そうに首を傾げた彼女。
そして……俺の視線の先には、朝陽の友人の姿が。

名前…なんだったかな。 たしか…笹木だっけ…?

「朝陽は? 一緒じゃないんですか?」

「は? いちご?」

なんで朝陽? 俺、朝陽と約束なんてしてないよな?

「遥、この人知り合い?」

「いや……」

笹木は俺の隣にいる彼女に目を向けると、急に視線が冷たくなった。

「へぇ…なるほどねぇ…」

その視線は恐ろしいほど冷たくて……背筋が凍るって、こういうことを言うのかと思った。

だけど、笹木がその視線を向ける理由がわからない。 確かに、笹木に好かれていない自覚はある。
当然だ。 俺は、朝陽に対して最低なことをしているんだから。
自分の一番の友達にこんな仕打ちをしている俺を嫌うのは、当たり前のことで…

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