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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第2章 【残り菊~小紅と碧天~】 恋一夜

 今日は冬とはいえ温かな日和なので、少し動けば、うっすらと汗をかくほどだ。しかし、久しぶりに身体を存分に使うのは心地よい。もちろん、仕上がった袢纏を見て歓ぶだろう叔父の顔を想像しながら仕立物をするのも楽しいけれど。
 ほんの少しだけと休憩しているまさにその時、事件は起こったのだった。背後からいきなり尻を撫で上げられ、小紅は悲鳴を上げた。
「―っ」
 思わず振り向くと、眼前には最も逢いたくない男がいた。

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