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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第12章 第一部第三話【月戀桜~つきこいざくら~】 十六夜の月

 奴らに見つかる前にここを去るのだ。理性的な自分はしきりにそう告げていたけれど、何故か身体が言うことをきかない。まるで石になって縫い止められたかのように思うように動かないのだ。
 あまりにも怖ろしい秘密を知ってしまったために来した混乱のせいであった。だが。
 小紅の命運もここで尽きかけた。
「誰だッ」
 鋭い誰何の声と共に姿を見せたのは他ならぬ栄佐だった。

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