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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第12章 第一部第三話【月戀桜~つきこいざくら~】 十六夜の月

 間一髪、身軽さが幸いして、小紅は扉が開く一瞬前に小さな身体を石段の側の生い茂った草むらに隠していた。草むらに飛び込んだ拍子に膝や手を少々すりむいたが、この程度、生命を持っていかれるくらいなら、たいしたことはない。
 ところが、どうやら、今夜のなりゆきを見守っていたのは小紅だけではなかったようである。

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