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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第2章 【残り菊~小紅と碧天~】 恋一夜

 どこに行くのかと思っていたら、随分と奥まった場所にまで来た。
 ここは―。
 五年前の記憶が俄に巻き戻される。五年前も朽ち果てそうだった物置は更に風雨に晒され、見るも無惨な姿と変わりはてている。屋根などは今にも崩れ落ちてきそうだ。
「ここを憶えているか?」
 準平は朽ちかけた物置に入ると、無造作にまるで荷物を放るように、小紅の身体を床に投げ出した。

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