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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第14章 第一部第三話【戀月桜~こいつきざくら~】 熾火(おきび)

「小紅どのは良い娘やのぅ」
 ふと思案げに人差し指と親指で顎を挟んで上目遣いに彼女を見た。
「あんな売れない役者なんぞ、あっさり見限って俺の女にならんか?」
 龍馬の整った顔が間近に迫ってくる。殆ど唇と唇が触れ合わんばかりの至近距離まできて、彼は止まった。
「俺は本気じゃけん。俺と一緒に土佐に来(き)いや。昨日も話したように、うちの家族は皆、気さくな人間ばかりじゃけんの。きっと義母上も兄上も姉上も小紅どのを気に入る」

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