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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第14章 第一部第三話【戀月桜~こいつきざくら~】 熾火(おきび)

 小紅は間近にある龍馬の顔から、ふっと顔を背けた。
「私には栄佐さんがいますから」
 頬が燃えるように熱い。途端に、龍馬が弾けるように笑い出した。
「冗談じゃ。ほんにからかいがいのある女じゃのう」
「―酷い、坂本さままで私をおからかいになるのですか!」
 小紅の眼にまたじわりと涙の粒が盛り上がったのを見て、龍馬は慌てた。

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