
一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第15章 第一部・第三話【戀月桜~こいつきざくら~】 すれ違い
その身代を放り出した兄とは小紅をめぐって、恋の鞘当てをした栄佐としては、どうしても辛辣な物言いになってしまう。
小紅は溜息をついた。
「栄佐さん、そんな言い方は止めましょうよ。先代の市兵衛さんはまだ若いけれど、商売人としても人間としても、ひとかどの方だったわ。きっとよくよく考えた上での決断だったのよ。もう市兵衛さんではなく徳太郎さんだけれど、その徳太郎さんも大坂で打出屋のお嬢さんと所帯を持たれるって聞いたわ。来月にはもう祝言だそうよ」
小紅は溜息をついた。
「栄佐さん、そんな言い方は止めましょうよ。先代の市兵衛さんはまだ若いけれど、商売人としても人間としても、ひとかどの方だったわ。きっとよくよく考えた上での決断だったのよ。もう市兵衛さんではなく徳太郎さんだけれど、その徳太郎さんも大坂で打出屋のお嬢さんと所帯を持たれるって聞いたわ。来月にはもう祝言だそうよ」
