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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第2章 【残り菊~小紅と碧天~】 恋一夜

―いや、いや。
 小紅はそれでも涙を流しながら、抗った。
「往生際の悪い女だな。なあ、どうせ祝言を挙げちまえば、同じことを何度でもやるんだ。今からやったって、同じことだよ」
 準平の眼には飢えた獣のような凶暴な光が宿っている。彼がニヤつきながら小紅の着物の袷を更にひらこうとしたまさにその瞬間、大きな怒声が響き渡った。
「何をしている!」
 物置の戸が開け放たれ、武平が仁王立ちになっていた。

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