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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第15章 第一部・第三話【戀月桜~こいつきざくら~】 すれ違い

―どんなお人が坊にこの文を託したの?
 五、六歳になるであろう男の子は見たところ、町家の子どものようである。小商いをしている家の子どもか、この長屋に暮らす子どもたちよりはよほど身なりは良かった。
 子どもの眼線の高さになって問いかけると、子どもはくりくりとした瞳を動かして応えた。
―うちの旅籠に泊まってるお客さん。坂本さんていう面白いお侍さまだよ。

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