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　一度小紅もその列に並んだが、無情にも小紅の二人前で桜餅は完売となり手に入らなかった。桜餅は四月一日から売りに出される。いつ販売終了となるかは茶店の婆さんの心次第ということになっている。
　今、小紅は店先の右側の椅子に腰掛けていた。椅子の上には緋色の番傘がさしかけてあり、日除けとともになかなか洒落た演出をしている。もっとも、特に珍しくない、どこの茶店でも見られる光景だ。