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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第15章 第一部・第三話【戀月桜~こいつきざくら~】 すれ違い

「何かお判りになりましたか?」
 小紅は少し距離を置いて背中合わせになった龍馬とはまったく別方向を見ながら、小さく口だけを動かす。これなら、二人が知己だと判る人はいないだろう。
 その時、奥から小柄の腰の曲がった老婆が出てきた。この老婆が一人でやっている店で、桜餅も一人で作る。それゆえ、一日に決まった数だけしか作れないのだ。
「いらっしゃい、何になさるね」

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