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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第15章 第一部・第三話【戀月桜~こいつきざくら~】 すれ違い

 この老婆の愛想のないこともまた桜餅と同じくらい有名な話である。とはいえ、茶店では色んな人が出逢い、様々な話をしてゆくから、これくらい偏屈で口が硬い方が良いのかもしれない。
「お茶をお願いします」
 甘いものを食べる気分ではなかったので、お茶だけを注文する。龍馬は甘党の彼らしく、既に桜団子を串ごと頬張っていた。
 老婆が奥に引っ込んだのを見届けたように、龍馬が応えた。彼もあらぬ方角を見つめ、小紅には半分背中を見せている。

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