テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第15章 第一部・第三話【戀月桜~こいつきざくら~】 すれ違い

「土佐藩の?」
「何ちゃ俺の国から江戸に出てきた商人が悪さしとるちゅうのも気分の良うない話ぜよ。けんど、この件に土佐の者(もん)である俺が拘わったいうのも何かの縁じゃろう。同郷の者として、余計に許せんことじゃ」
 そこで龍馬がふっと口をつぐんだ。見れば、老婆が茶を運んできたのだ。小紅は礼を言って、湯飲みの載った盆ごと受け取った。
「それで?」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ