一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第15章 第一部・第三話【戀月桜~こいつきざくら~】 すれ違い
また老婆が奥に引っ込んだので、小紅が続きを催促する。団子をほおばっていた龍馬が慌てて噎せて、茶で流し込んだ。
小紅は笑いを堪えるのにひと苦労だ。
「そんなに笑わんでも良えじゃろうに」
龍馬は恨めしげに呟き、気を取り直したように話を戻す。
「土佐屋は何分、顔が広いらしい。三十年前に土佐から江戸に出てきたちゅう話じゃが、方々に賄賂を送って色んな方面につてを持ってるいう話じゃ。そんで、つてを頼って始めたのが密輸じゃった」
小紅は笑いを堪えるのにひと苦労だ。
「そんなに笑わんでも良えじゃろうに」
龍馬は恨めしげに呟き、気を取り直したように話を戻す。
「土佐屋は何分、顔が広いらしい。三十年前に土佐から江戸に出てきたちゅう話じゃが、方々に賄賂を送って色んな方面につてを持ってるいう話じゃ。そんで、つてを頼って始めたのが密輸じゃった」