テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第15章 第一部・第三話【戀月桜~こいつきざくら~】 すれ違い

 なるほど、それなら納得はできる。薩摩の大商人の背後には更に大物の武士が控えている。確かにそうだろうと思う。琉球はともかく、清国はかなりの大国だ。その大国を相手取って、江戸の小商人が対等に渡り合えるとは思えない。さしずめ、土佐屋は大物の手の上で転がされる手駒にすぎない。
 しかし、清国を相手に対等に物が言えるとなれば―。小紅はヒュッと息を呑んだ。
「薩摩の島津さま辺りが?」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ