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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第2章 【残り菊~小紅と碧天~】 恋一夜

「済まないね、本当に済まない。お前にもしものことがあれば、私は兄貴に申し訳が立たないよ」
 武平は幾度も詫びた。武平は兄の仁助に言わば、煮え湯を呑まされたはずである。その借金を肩代わりし、残された娘を引き取った。それだけでもはや、仁助に対して申し訳ないも何もないはずなのに、律儀に小紅を守ろうとしてくれている。
「叔父さま」
 小紅は自然に武平の胸に飛び込んでいき、武平もまた小紅をその腕に包み込んでいた。

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