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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第16章 【戀月桜~こいつきざくら~】決着~安政六年四月五日宗徳寺

「そうだな」
 栄佐は頷き、それから両手を組んで持ち上げ、空を仰いだ。
「何だか久々に空を見たような気がする」
「空はいつもこんな近くにあるのに?」
「そうだな、正直、空を見る心の余裕がなかった」
 栄佐は呟き、改めて小紅を見つめた。
「小紅、俺は芝居小屋に戻る」
 え、と、今度は小紅が眼を瞠る番だ。
「本当!?」

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