一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第16章 【戀月桜~こいつきざくら~】決着~安政六年四月五日宗徳寺
栄佐は彼女の顔を見つめながら、ゆっくりと首肯した。
「ああ、お前にはさんざん心配をかけたが、もう大丈夫だ。俺ァ、やっぱり芝居をやってねえと生きた心地がしねえ。そう、坂本さんも言っていたように、ここが苦しいんだ。舞台を離れてみて、俺はつくづく思ったよ。俺が生きる場所は舞台しかねぇってな。どんな役でも良いから、舞台に上がって演じてこそ、俺は板東碧天なんだ」
栄佐は龍馬の仕種を真似るように手のひらを左胸に当てた。
「ああ、お前にはさんざん心配をかけたが、もう大丈夫だ。俺ァ、やっぱり芝居をやってねえと生きた心地がしねえ。そう、坂本さんも言っていたように、ここが苦しいんだ。舞台を離れてみて、俺はつくづく思ったよ。俺が生きる場所は舞台しかねぇってな。どんな役でも良いから、舞台に上がって演じてこそ、俺は板東碧天なんだ」
栄佐は龍馬の仕種を真似るように手のひらを左胸に当てた。