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　小紅の生まれた季節でもある冬を表す深紅の椿が所々塗りのはげ落ちた姫鏡台に蒔絵で描かれている。小さくても父がわざわざ娘のために特注で作らせた逸品だ。
　小紅は元は江戸でも屈指の大店と評判だった上州屋の一人娘だった。父は仁平といい、奉公人の身から先代主人に見込まれて娘婿に納まり、上州屋の暖簾を引き継いだ。夫婦仲も良く仁平は先代亡き後もその信頼を裏切らず地道に商いを続けていた。