無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

　むろん、役者稼業を続けている限り、立て役になりたいという夢を棄てはしないだろうが、ひと頃のように怖いくらいに思いつめているといったことはないだろう。むしろ、執着や拘りを棄てた彼はその役者としての存在感を増し、成長した。これまで固い殻に閉じ込められていた碧天の才能がかえって外に現れて開花したといえた。
　師匠の梅光はまだその変化について特に何も指摘はないけれど、あれほどの役者だから、碧天の成長と変化に気づいていないはずはなかった。