テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第19章 第二部・第四話【悲願花~女になった男~】 異変

 妖艶な水も滴る美貌は相変わらずだが、何か追いつめられたような切羽詰まった雰囲気が影を潜めて、貫禄が出てきたと、長年の崇拝者(ファン)が口を揃えて言うようになった。
 それはもしかしたら、碧天自身が諦めたことによるものなのかもしれない。そのことについて恋人である小紅は彼に訊ねたことはない。たとえ親密な間柄であっても、口出ししても良いことと悪いことがある。だが、小紅自身が思うに、栄佐の中では既に立て役になるという想いへの執着はないのではと思っている。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ