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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第2章 【残り菊~小紅と碧天~】 恋一夜

 ここにいる限り、あの準平の執拗な眼から逃れられはしない。いっそのこと、叔父に話して出ていこうとも考えるけれど、病気だという叔父の側を離れることなどできようはずもない。
 激して準平を殴りつけた直後、武平は心ノ臓辺りを押さえて苦悶の表情を浮かべていた。あれは明らかに心臓発作を起こしたに違いなかった。軽いから、あの程度で済んだのだ。

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