無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

　まだ弱冠十六歳の若い当主だが、穏やかで思慮深かった兄とは異なり、覇気に飛んだ若者らしい。けして短慮ではないのだが、負けん気が強く、年嵩の同業者が多い寄り合いでも、年長者に負けずに言い返すと早くも評判になっていた。
　その点、兄の徳太郎は控えめな人柄で、そういった席では常に一歩引いていたから、中には大坂に行った兄を惜しむ同業者も多いという。隠居している先々代陽斎はまだ五十になったばかりで、隠居はしたものの、いまだに京屋では厳然たる影響力を持っている。