テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第20章 第二部・第四話【悲願花~女になった男~】 定命  

 もちろん、人通りの多い町人町の目抜き通りをぼんやりと歩いていたのは小紅の手落ちだ。心から詫びたのだが。
 どうも相手が悪かったらしい。
「貴様の眼は節穴か? どこを見て歩いておるのだ」
 やたらと背の高い浪人は痩せぎすで、目つきに険があり、暗い荒んだ雰囲気を纏いつかせている。元々の性格か、長年の浪人暮らしでこのようになったのかは判らないが、あまり拘わりたくない手合いだった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ