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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第20章 第二部・第四話【悲願花~女になった男~】 定命  

「私が迂闊でした。本当に申し訳ございません。この通り、お詫び申し上げます」
 再度腰を折ると、浪人が懐手をして仁王立ちになった。
「どうもこの頃は侍を馬鹿にする町人どもが多い。先刻の質屋の主(あるじ)も我が家に代々伝わる家宝の国光を質草にすると申したに、あれしきのはした金でごまかそうとする。畏れ多くも東照大権現さまより拝領の家宝を偽物呼ばわりするとは許し難いっ」

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