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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第20章 第二部・第四話【悲願花~女になった男~】 定命  

「良かろう。なかなかに度胸の据わったおなごのようだ。―気に入った」
 浪人は抜いた刀をあっさりと鞘に納めた。
「なに、たいしたことではない。今は呑みたい気分ゆえ、一刻、酒の相手をしてくれれば良い」
 人垣の後ろで中年の太り肉(じし)の町家の女房が叫んだ。
「駄目だよ、そんな胡乱な男についてっちゃ駄目だ。あんたみたいな器量良しは何をされるか知れたもんじゃないんだから」

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