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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第20章 第二部・第四話【悲願花~女になった男~】 定命  

 浪人がさっと振り向いた。その細いつり上がった双眸に怖ろしいほどの殺気が閃いた。
「何やつだ。余計な口を出す者は」
 しかし、誰も応える者はいない。互いに遠巻きに見ている者同士が顔を見合わせているだけだ。
「誰だっ、出てこい。まずは、そやつから叩き斬ってやる」
 浪人が更に息巻いたそのときである。
 人垣の輪が割れて、一人の若い男が出てきた。

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